Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “桜樹幻想”C
 



          




 よほど久し振りの熟睡だったのか、回復力が早い筈の子供にしてはずんと明るくなってから目が覚めた坊やであり、
「…?」
 このところの“いつもの朝”とは様子が違ったので、状況把握に少しほど間がかかった。冷たい地べたに直にではなく、柔らかな綿入れの大人用の袷
あわせを布団の代わり、くるりとくるまれて桜の樹の根元に寝かされていた自分に気がついて。身を起こしながら辺りをきょろきょろ。焚き火はもう消えてるけれど、手をかざすとまだ温かい。炎は見えないが、薪はまだほんのりと熱いみたい。荷物も残っているから、あのおじさんはどっか行っちゃった訳じゃあなさそうだ。その身の半分はまだ暖かい袷の中に居残りながら、そうこう思っていると、
「おお、起きたか。」
 傍らの草むらからぬっと分け出でて来たお兄さんにぎょっとする。立つと物凄く背が高い人。あ、いやいや、人じゃあないって言ってたっけ。
「すまんの、気配がなくって驚いたか?」
「…うん。」
 寝しなに話してたこと、思い出したのか。だったら…自分にはやはり、この人は見えない存在なのかなと思ってか。小さな肩を見るからに落とし込み、しょんぼりとしかかったその鼻先へ。ぶらりと垂れ下げられたものがあり。
「あ…。」
「見事なものだろう。」
 吊るして運びやすいように、エラから口を通して縄でくくられたヤマメが2匹。濡れたうろこが朝日で光る、どっちも坊やの顔より長い大物だった。
「向こうの瀬で捕まえて来たのだが、こんなものをぶら下げて徘徊しておっては見とがめられるからの。念を入れて気配を消してた。」
 だから気づかぬのが当たり前。判ってしまったのでは俺の術の腕が落ちたことになろうぞと、からからと笑ってやり、
「まずはこれを焼いて食おうな。」
 にっかと太々しく笑ったお兄さんへ、何故だかほっとして。こちらからも嬉しそうに笑い返す坊やへと、

  「それから…お前にはこれから、色々と教えてやるからな。覚悟をしなよ?」
  「???」

 艶のある黒い髪、首を傾げる仕草に合わせて、その頬の脇へとすべらかし。坊やにはまだちょこっと、意味が分からないことを言い足した、お兄さんだったりもしたのだった。





            ◇



 それからの数日、ほんの十日もあったかどうかという短い間に。葉柱が坊やに教えたのは、まずは人の手を頼らずとも山野で過ごせる生き残りの方法と、それから…簡単な陽の咒を幾つか。歴
れっきとした陰体である葉柱自身は当然のことながら使えはしないが、術師が使うのを見る機会があって覚えていたものは結構あって。炎の点け方や空気中の水蒸気から水をくみ出す術、簡単な魔除けに結界の咒。風の読み方、そこから間近い天候の変化を推察する方法。京の都に近いとはいえ、まだまだ田舎で自然も色濃く残るこの地で、何カ月かだけならそれで生き延びることも出来ようほどの、基本中の基本をとりあえずは叩き込んだ。

  『この魚は小さいくせして縄張り意識が強いから、
   同族の魚が近づくと、出てけって体でぶつかって来る。
   そんな習性を利用すれば…。』

  『その草は人には毒だから食べてはいけないよ。
   あと、こっちの葉は触れたらたちまち肌がかぶれる。
   逆にこの葉っぱは摺り潰せば打ち身の腫れを引かせる薬になるから…。』

  『刃物はよ〜く研いでおかないといけない。
   切れ味が悪いと余計な力がかかって、結局怪我をする元になる。』

 一度言ったことはそのまますいすいと吸収してしまう優秀な生徒さんは、手本を見せなかったことまでも、豊かな想像力で完璧にこなして見せ、褒めればそれは嬉しそうに笑って見せるようにもなった。この幼さでそれでも何とか生き延びて来れたのは、意志の強さが支えた警戒心が強かったからでもあったのだろうに。夜になって眠る時には、筋骨頼もしく、ごついばかりの葉柱の懐ろに、暖かいのか居心地がいいのか、自分からもぐり込んで来るほどで。あれほど気丈な子が、なのに頼りにして擦り寄って来るのは、頼りない力での精一杯で、胸の奥のやわらかいところをきゅうきゅうとつねられるような、そんな切ない痛さがあって。
“………。”
 何の得もないままに、子供の自分と言葉を交わしてくれる相手。たくさんの知らないを満たしてくれる相手。独りにしないで温かい懐ろへかくまってくれる相手。それがいなくなる辛さを、自分はこの子に、再びの…もっと深い傷となると判っていながら突きつけねばならないのだと。安心し切った寝顔を見るたび、このお顔がどれほど曇るのかという罪悪感を、毎夜のように思い知らされてもいて。

  「………あ。」

 不意に吹きつけた強い風。周囲の草むらを縦横無尽に掻き回しただけでなく、彼らとともにこの数日を過ごしてた相棒の、桜の古木の梢を飾ってた緋白の花びらをも、一気に舞い上げ、撒き散らかした。すっかりと春な筈だのに、視野を覆ったのは降りしきる雪のような花吹雪。桜の花の寿命は1週間で、しかも一気に木ごとという、それはそれは潔く、鮮やかなまでの落花の舞いで。

  ――― それから、あのね?

 ちょっぴり不思議な組み合わせの二人。おままごとみたいにあれやこれやと教わっていた数日が、世界から切り離されてた別世界みたいに思えていたものが。今の旋風で、今の花吹雪で、一気に弾けたような気が、して。
「………。」
 まだ何も、これまでだって一言も、そんな話はしていなかったのに。
「…あんな?」
 選りにも選って、葉柱の側の踏ん切りがなかなかつかなくての。戸惑いや躊躇が及んでのこと、だったのにね。

  「おっさん、此処にはいつまで居られるの?」

 ちょっと考えれば判ること。先にこの地に、言わば“落ち伸びて”いた坊やだから。何にもないこんなところ、旅人として通りすがっただけの葉柱だったのは最初からお見通しだったし。何だか性急にあれやこれやを次々に教えるということは、腰を据えて上達を待ってる余裕がないってことでもあって。ああ、こんなところまで端っこい子だったんだと、そんな哀しいことへまで自分で気づいてしまった彼へ、なんて不甲斐ない大人だろうかと、臍
ほぞを咬んでしまった葉柱だったが、
「…………。」
 勉強を兼ねた採り方や調理で食べ物を与えるのみならず、自分の生気も寝ている間に分けてやっていたから。体の方はもうすっかりと、年齢相応、いやそれ以上に元気で闊達な身へと戻ってもいる。

  ――― だが…心は? 気持ちの方は?

 吹き抜ける風に、桜が揺れて、手毬のような花の塊、ほろほろほとびて花びらが舞う。とめどなく降る涙雨のように、ほろほろちらちら震えながら、辺りの空間を埋めて舞い続ける。

  「……………。」

 いっそ。そう、いっそ連れて行こうかと、思った途端に心が震えた。弾かれたように顔を上げてしまったくらいに。こんな小さな子供の一人くらい、一緒に過ごしても障りはなかろう。この子には自分の正体だって言ってあるし、咒を教えたところどころで、人との差異だって言って聞かせた。他の仲間には引き合わせる必要もなかろうし、何と言っても寿命が違うのだからして、大人になるまで十分に、傍らにいてやれるのではなかろうか。こんなぎりぎりでそうと思ったが、だが…どうして今の今まで思いも拠らなかったのかと言えば、

  「俺はもう、大丈夫だから。」

 すっかりとしゃんとして。胸を張り、真っ直ぐな眼差しでこっちを見やって。小さな坊やが言い放つ。

  「おっさんについてったら、俺、そのまま人とは交われなくなるんだろ?」

 ああ、そうだったね。そんなつもりはなくたって、人はこういうことにだけは敏感だから。坊やが石もて追われるやもしれないし、逆に葉柱が徹底的に退治されてしまうかも。だから、ついてゆくなら 人ではない身にならねば、人である何かを捨てねばならない。そうしないとどちらもが結局は、辛いことが待っているから。両方を深く傷つける、悲劇が必ずやって来る。ならば、そうなる前に、一番最初に、哀しい別れを選んだ方がずんとましだから。

  「おっさんは、俺に、生きる方法を教えてくれたから。」

 だったら。人として生き延びねばならない。だから、ついて行ってはいけないのだと。自分の進むべき方向を、やっぱり自分で悟った賢い子供。ほんの数日の間に、表情にもめりはりがつき、笑うとちょっぴり生意気ながらもそれは愛らしいお顔になると、そうだと判ったばかりなのにね。

  「…また逢おうな。」

 お互い生きてりゃどこかで逢える。まだまだ人の力では、そう遠くまでは行けないからね。歩いての移動、船での渡航、そんな程度の距離しか稼げないから。

  「うん。俺、大人になったら絶対におっさんのこと探すから。」

 もしかしたら、どっかの頽れかけの神社に潜り込んで、似非っぽい神職になってるかもしんないけれど。だとしても、おっさんたちには咒や術は使わねぇし。だから、きっとまた逢おうって。気丈で賢くて、元気になったら急に生意気さも増した、でもでもやっぱり、幼くて可愛い子。なのに何とか頑張って笑ってくれて。心配は要らないって振りがしたかったか、頑張ってくれたけれど。でも、そこまでは徹底出来なかったか、口許が、目許が、やっぱり引き歪んでしまっているのが、見ていてどうにも切なくてしようがない。ああ、こんなに誰かを愛しいと思ったことなんてあったかな。別れるのが辛くって辛くって、でも。いつまでも引き伸ばしてた自分のせいで、こんなに辛いんだし。諦めの悪さが坊やに哀しい選択をさせた。そんな不甲斐なさも面憎い。もしももう一度どこかで逢えたなら、今度は大人同士になっての再会だろうから。その時にせいぜい恥をかかないようにって、自分の側でも気持ちも新たにと胸に刻んで。


  ――― 暮れなずむ草原。桜の舞い散る風の中。
       その風に身をゆだね、
       愛しい子との別れに心を裂いた、そんな夕暮れどきだった。








            ◆◇◆



 同じ匂いの春の風。やさしい陽だまり。此処の桜を見ていて不意に、古い記憶を掘り起こされた総帥殿。桜の精霊はちょこっと言い過ぎだったが、その子と過ごした数日は、彼にとっても不思議で忘れ難い、そんな思い出になっているのだろうことが知れ、
「今頃、どこでどうしているのかなと思ってな。」
 誰かさんのらしくない物思いをどうのこうの言えないなと、そんな風に思った葉柱であったらしくって。こうまで雄々しい男の人が、なのにあんまり寂しそうに笑うものだから、
「元気にしておいでですよう、きっと。」
 途中のどこからか、自分のことみたいにじわじわ涙し始めてしまった小さな書生くんへは、声まで震わせ、今にもそのまま大泣きしそうで。そんな風に感情移入しやすい彼へこそ、微笑ましげに目許を和ませた憑神様が、すぐ傍らに付きっきりになっており。うぐうぐと声が詰まりそうになりながらも、
「きっと今頃は、立派な方におなりですね。」
 何とか頑張って笑って見せた健気さが、ああ、稚
いとけない真っ直ぐな子ってのはどうしてああも、似たような懸命さを見せるのだろうかと葉柱に思わせて。とうとう泣き出しそうになった小さな肩を、促すように進に抱かれて、少し離れていようねと遠ざかった大小二つの背中を見送って。
「………。」
 他には人影のない、静かな静かな春の原。穏やかな日和に温められて、その目映さもいや増した、梢を埋める緋白の花手鞠が青空に映える。ほろりほろりと ほころぶ花びらが、時折吹き来る悪戯な風にあうと、ちらちらちらと震えながらの花舞いを見せてくれて。
「………。」
 昔話の間中、退屈だったか口を噤んだままでいた金髪痩躯の術師殿。依然としてどこか無感動っぽいお顔のままなのは、そんな昔の話なぞ、今更掘り返したってどうにもならないことだ…なんて。彼お得意の合理主義にて断じたからであろうよなと。そこはとっくに把握が出来てる総帥殿、何かを言いかけて、だが、すぐ目の前をよぎった花びらに思わずの瞬きをした………そんな間合いに、

  「で? あん時の握り飯は、どっから盗んで来たもんだったんだ?」
  「………あ?」

 聞き慣れた声が、そんな憎まれを言う。
「あのな。一応は人の姿を保ててたとはいえ、正体を現されちゃあ不味いんだから、盗みなんて危ない真似なんかするかい。」
 体がいよいよ保たないならば、術を解けばいいだけのことだと、いつもの言い争いよろしく言い返したところが、


   「小魚の飴煮が一番美味かった。
    あれって贅沢にも きび砂糖の汁を使って煮てあったよな。」

    ……………え?


 少しだけ強い風が一陣、彼らを取り巻くように吹きすぎる。この周辺には枯れた草原はなく。その代わりのように木立ちが揺れて、木葉擦れの音が驟雨の雨脚のように鳴り響く。術師の金の髪をなぶって躍らせている風は、さぁ…っと音もなく舞い上がった白い花びらを運んで来て。目の前に立つ、それは妖冶な青年のオーラに従うかのように、その痩躯へと上掛けのようにまといつく。
「お前…?」
 いつの間にやら。肉の薄い口許に淡い微笑が一刷毛ほど浮いており。意味深な上目遣いの、その視線だけを残してそっぽを向こうとしかかる彼だったのへ、薄い肩をついつい無意識に掴み止めてた葉柱で。
「なんで…それを知ってんだ?」
 わざわざ訊いたのは、当て推量でからかっただけだと、彼がそうと言うのを確かめたかったから。あの時に世話になった里外れの茶屋は、もう既
とうに影さえない。些細なことから勃発した地方豪族同士の詰まらぬ争いの側杖を食い、小屋は焼かれ、人のいい笑顔をしていたあの女将は、親戚を頼って遠くへ去ったと聞いている。あの野原だけが、桜の樹だけがいつまでもそのままで、だが、あの時のあの子供とは逢うこともなく。手隙になると時折、こっそりと足を運んでいたけれど、それもこの頃では少しずつ間を空けるようになっていたのは。もう二度と逢うこともなかろうと葉柱自身が諦めつつあったからかも。この術師との関わりを得てからは、毎日忙しくなったから尚のこと、足を運ぶこともないままに…もうどのくらいになるのかなと。そんなことを思い出してたところへの、それはあまりに鮮やかに舞い降りて来た、天啓みたいな一言で。


   「どうしたよ、蜥蜴野郎。」
   「…そう、だよな。あれから15、6年は経ってるんだ。」
   「ああ。そうだよな。」
   「なのに。俺はついつい、小さかったあの子の面影ばかりを探してて。」


     『きっと今頃は、立派な方におなりですね。』


 そうだ。そうだった。彼らは、人は、すぐにも育つ。そしてすぐにも老いてゆく。自分たちと違い、遥かに短い一生を生き急ぐ。判っていた筈なのに、ついつい失念していた自分。あまりに短い間だったから。一緒にいたのがほんの数日だったから、それで。


   「結構若かったんだな、おっさん。」


 にんまり笑った術師殿の、いつもと同じ、それはそれは強かそうなその笑みが。今日この時ばかりは、あのね? 見る見る滲んで見えなくなって。しょーがねぇ奴だよなぁって、妙に子供じみた言いようで肩をどやされながらも、やっぱり。涙がなかなか止まらなくって、往生した総帥様だったそうですよ?









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「思い出した…つか、気がついたのは、俺もつい最近だ。この根付けを見てて、な。」
 一応風が冷たいかもとの用心から、羽織って来ていた袷の懐ろから、蛭魔がその白い指先に摘まみ上げたのは。いつぞやの雨の晩に葉柱から貰った、あの不格好な翡翠の根付け。蜥蜴の総帥殿がその得物、闇の精霊刀の提げ緒に結んでいた根付けの石で。傍らにいない時でもその代わりになるようにって、何かおくれと珍しくもねだって取り上げた…もとえ、進呈されたものであり、
「あん時のおっさんの眸と同じ、翠の綺麗な石のこと。ずっと覚えていたからな。」
 刃物の効率的な使い方も、コツを押さえて手際よく教えてくれた人。その懐ろに入れてくれたりした時に、間近になると底の方まで透けて見えそうだった、その綺麗な瞳と同じ色味の緑色の軟鉱石のことも、すっとずっと覚えてた。
“もっとも、こんな小さいもんだったとは思わなかったけれど。”
 だから…すぐにはピンと来なくって。
「自分が近づいた蜥蜴の邪妖の大将が、まさかあん時のおっさんだったなんてな。」
 判っていて故意に近づいた訳ではないのはホント。どんなに探しても相手は邪妖。しかも、自分たちの格をわきまえて、進んで人に悪さはしないとはっきり明言したくらいだったから。そんな相手と人との接点なんてそうそう出来るもんじゃあない。それに、
「こっちは恐らくお前と逆でな。凄げぇおっさんだったって印象がどうしても先に立ってて。」
 だから、今頃はもっとずっと年取ってんじゃないかって。それが先入観になってたから。年を経た大邪妖をばかり、成敗を兼ねて尋ね歩いたものだった。
「この青二才があん時の頼もしかったおっさんだなんて、なかなか気がつくもんじゃないっての。」
「青二才で悪〜るかったな。」
 おっさん呼ばわりもちくちくと癇に障ってるその上へ、そうまで言われちゃあ…ねぇ?
(笑) 冗談口が出るほどまでに、何とか気持ちも落ち着いて。それからあらためての挨拶は、
「言っとくが、別に感謝はしてないぜ。」
「ああ。あん時に俺もそれは思ってた。」

  ――― もしかして、生き続けることへのあまりの辛さに音を上げて、
       あの時どうしてあのまま死なせてくれなかったって、
       そんな風に思ってしまうかも知れないからな。

 だったらだったで、逢ったら厭味の一つも言ってくれって。そんな言いようをして、じゃあなって手を振って別れた人。風に撒かれて逃げ惑うように辺りを舞ってた花びらの中、頑張れとも負けるなとも言わないで立ち去った彼だったのは。そんな通り一遍な一言で“じゃあ後はお前の尽力次第だからな”なんていう、責任放棄をしたくはなかったからだろう。ただ生きるってだけでも小さな子供が独りでかかるには苛酷なことで、そんな生ぬるい励ましなんて、何の助けにもならないって判っていたから。そして、あの子はこんなにも、当世には他に類がないほど、雄々しく逞しく頼もしい、一端の青年へとしっかり育っていた訳で。


  「それにしても。」
  「んん?」
  「こないだの椿といい、隠し事が多すぎやせんか? お前様。」
  「それを言うならお前こそ、
   大事なことくらいきっちり覚えておかんか、こんの うつけ者。」


 あらあら、喧嘩腰も相変わらずですかと。通りすがりの黄色いアゲハ蝶が、二人の邪魔にならぬよう、ふわりと避けてゆきすぎる。春の陽だまりは暖かく、世はなべて こともなし………。







  〜Fine〜 06.4.02.〜4.04.


  *先に言い訳しちゃいますが、
   “頑張れ”という言葉自体が
   そうまで無責任で薄っぺらいという意味ではありませんで。
   心を込めて、エールを送る、
   そんな暖かい励ましの一言だろうなっても思います。
   ただ、いつまでも忘れられないのが、
   あの“阪神淡路大震災”のときに、被災地に住んでた妹が、
   誰からも彼からも、テレビからさえも
   お別れの時のご挨拶代わりみたいに“頑張れ”と言われるのが
   何だかイヤだと言ってたんですよね。
   もうもうそれしか言いようがないんだろうなって思うけれど、
   これ以上頑張れって?って、心の中で言い返しそうになる自分がイヤだと、
   そんな風に言ってたのが、どうしても心から離れませんで。
   それで、こんな言い回しで使わさせていただきました。
   誤解なさった方、傷ついちゃった方がいらしたら、
   こういう意味です、言葉が足りなくてごめんなさいです。

  *………で。
   このネタは、いつか使ってやろうと
   虎視眈々、狙ってたワタクシでございまして。
   邪妖の葉柱さん以上に謎の多いお館様でしたが、
   こんな接点が実はあったんですよね〜vv
   お互いに覚えてはいたけれど、まさかこやつがその相手だったとは。
   片方が年を取らない“畑違いな奴”だと、
   こういう混乱もありかなと。
(苦笑)
   判ったからったって、何か変わるような彼らではないとは思いますが、
   当分は葉柱さんが“父親モード”になっちゃって、
   涙ぐんでたりするかも知れません。(そんで鬱陶しいって蹴られてたり・笑)
   ちなみに、似たような爆弾ネタは もう一個あります。
   でもまあ、当分は出番もないかな?

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